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vol.5 旧神谷伝兵衛別荘〜大正時代が残した文化建築〜

葡萄の香りの浪漫譚

かつての稲毛の風景 稲毛駅からせんげん通りを真っすぐ下り、国道14号線を左に折れ、暫く歩いたら左手に瀟洒な建物が見えてくる。大正7年(1918年)に建てられた、ワイン醸造や浅草・神谷バーの創設者で知られる神谷伝兵衛の別荘である。当時は洋館と和館からなっていたが、洋館のみ現存。初期の鉄筋コンクリート建築として全国的に大変貴重な建築物のため、国の有形文化財に指定され「千葉市民ギャラリー・いなげ」として活用されている。今回は、この旧神谷伝兵衛別荘の魅力に迫りたいと思う。

優雅をかざす時間

 石段を登って正門をくぐると、そこには緑に囲まれた庭園と松林、日常を忘れさせてくれるのどかな景色が広がる。さらに奥へと足を進めると、扇状にできた階段とバルコニー風のエントランスのモダンな雰囲気が、心を大正時代へといざなう。
 玄関を入ってすぐ右には、広々とした来賓用の洋室がある。暖かな温もりを感じる暖炉が設けられ、夏だけではなく冬の海も楽しめる演出が施されている。誰もいない冬の海を背景に、当時ここでは何が語られていたのだろうか? 天井に吊るされたシャンデリアが優雅に過ごした時間を物語っていることは間違いない。シャンデリアといえば、玄関にも同じ様なものが吊るされていて、その天井には、伝兵衛らしく葡萄が描かれている。
 玄関の正面には、宮殿を想像させる階段が延びている。2階へと上ると、そこには意外にも和室が広がっていた。窓から射すいくつもの光と、松林の奥から臨めたであろう海のバランスを当時に還って想像してみると、絶景そのもの。和室の床柱には、ワイン王の顔をのぞかせるかの様に、葡萄の古木が使われている。
 1階とは全く異なった和の空間には、まるで絵を飾っているかの様な景色を利用した丸窓、決して平らではない立体的な天井、当時は爽快な潮の香りを導いていたであろう、和室を覆うたくさんの窓などがある。この窓は今もなお、訪れた人々に稲毛の変わり行く時代の景色を、違和感なく絶妙なコントラストで映し出している。
 建物自体がもつ存在感や景色の素晴らしさは、建築物についての知識がない私にも存分に味わえ、優雅で素晴らしい時間を体感できた。みなさんも是非、足を運んでみてはいかがだろうか? 個性豊かな発見的景色がそれぞれの心に映ることだろう。
 こんな素敵な場所で、大切な誰かと、電気ブランやワインを傾けながら一日を過ごしてみたいと思った午後のひととき。忙しい時間を忘れ、大正時代へとタイムスリップすることができた。

旧神谷伝兵衛別荘旧神谷伝兵衛別荘
■開館時間 9時〜17時15分
■休館日 月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始
■入館料 無料
[指定区分]国登録有形文化財(建造物) 
[所在地]千葉市稲毛区稲毛1-8-35 
[所有者]千葉市 
[指定年度]平成9年




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